半導体製造装置用語集
リソグラフィ (Lithography)
1.リソグラフィ (Lithography) 一般
ArFi (ArF Immersion) 露光、ArF液浸露光
ArFエキシマ液浸露光の項を参照。
ArFエキシマ液浸露光 (ArF Excimer Immersion Lithography)
ArFエキシマ露光において、ウエハと投影レンズの間に液体(通常は水、屈折率n=1.436@波長193nm)を入れることによって等価波長を134 nmにして、解像性を向上させることができる。水を用いることで、レンズ開口数NAは1.35となる。NAが1.35となり屈折光学系では大口径化するため、反射屈折光学系が採用されている。
ArFエキシマ露光 (ArF Excimer Lithography)
ArFエキシマレーザー光、波長193 nmを露光光とする露光手法。
i線露光 (i-line Lithography)
超高圧水銀灯のi線を用いた露光手法。
確率的影響 (Stochastic Effect)
EUV露光において顕在化した現象。パターン微細化とともに光子数揺らぎ、レジスト構成材料の不均一性、露光装置のコントラスト低下により、パターン欠陥が確率的に生じる現象。
計算機リソグラフィ (Computational Lithography)
解像限界になると回折現象でマスクパターンが忠実にウエハー上で再現されない。ILT(Inverse Lithography Technology、最終的に求めるパターン形状になるようにマスクパターンや位相を変化させる)やSMO(Source Mask Optimization、光源形状とマスクパターンを最適化して解像性や焦点深度などのプロセスマージンを改善)などの超解像手法を適用する場合、計算機を駆使してマスク形状や光源形状を見積もる手法が計算機リソグラフィと呼ばれている。
KrFエキシマ露光 (KrF Excimer Lithography)
KrFエキシマレーザー光、波長248 nmを露光光とする露光手法。
高NA極端紫外線露光 (High NA EUV Lithography)
13.5 nmの極端紫外線光を用いた露光手法で、レンズ開口数NAを従来の0.33から0.55に拡大した露光方法。
極端紫外線露光 (EUV Lithography)
13.5 nmの極端紫外線光を用いた露光手法。
二光束干渉露光 (Two Luminous Flux Interference Lithography)
可干渉性(コヒーレンス)の2つの光束を鑑賞させてパターンを形成する手法。干渉縞は2光束の波長と入射角のみに依存する。レジストの解像限界を評価したり、回折格子を製作するのに用いられる。
Low k1露光 (Low-k1 Lithography)
Rayleighの式のプロセス定数k1の小さい露光。Resolution Enhancement Techniqueと同義。
2.露光機 (Exposure tool)
アナモルフィック投影光学系 (Anamorphic Projection Optics)
高NA(0.55)EUV露光において、スキャン方向の倍率(X8)とスキャンに垂直な方向の倍率(X4)が異なる反射投影光学系を示す。EUV露光では、EUV光がある角度を持って多層膜反射マスクに照射されるため、反射回折光も入射角度を中心に広がるが、X4倍率では微細寸法では大きく広がる。すると多層膜の反射率低下や投影光学系による回折光の捕捉が困難になる。倍率をX8と大きくすることで、回折角度が減少して、上述の課題を解消している。但し、従来と同じ6インチマスクを使用する場合、ウエハ上の露光面積は半分になる。
開口数 (Numerical Aperture)
光学系が光を集められる範囲を示す。開口数が大きいほど広範囲に光を集めることができるため分解能も向上する。
解像性向上手法 (Resolution Enhanced Technique)
解像限界近いパターンの解像性、焦点深度の向上手法。斜入射照明、位相シフト、SMO手法、高解像レジストの採用などが含まれる。
ケラー照明 (Kohler Illumination)
光源に輝度分布やムラがあっても照射面(露光の場合はマスク面)を、均一な照度、かつ大きな開口数NAで照明できる手法。集光系(照明絞り)と投影系(開口絞り)の2つの領域を設け、集光系では光源からの光がより多く投影系に到達するように働き、投影系は照射面に均一な光を投影する。一方、クリティカル照明は光源の輝度分布をそのまま照射面を照明する。
シグマ (σ) 値 (Sigma Value)
露光装置において照明光学系の開口数(NAi)と投影光学系の開口数(NAp)の比を示す(σ=NAi/NAp)。ここでσが大きい露光装置ほど大きな入射角で斜入射露光を行える。
斜入射照明 (Oblieque Illumination)
光軸の中心を外した位置に絞りを入れることによって、マスクに対し露光光束を斜めに入射させる手法であり、解像度や焦点深度DOFが向上する。絞り形状により輪帯照明、ダイポール照明、四重極照明などがある。近年はSMO(Source Mask Optimization)において、任意の絞り形状も適用されている。
斜入射露光 (Off-Axis Illumination)
超解像手法の1手法で、光軸の中心を外した位置に絞りを入れることによりレチクルに対し露光光束を斜めに入射させる照明方法であり、解像度や DOF が向上する。絞り形状により輪帯照明、ダイポール照明、四(重)極照明などがある。最新の露光装置では、SMO手法のため最適の絞り形状を選択することもできる。またEUV露光装置の反射照明光学系ではFFM(Field Facet Mirrors、 多数の可動ミラー)とPFM(Pupil Facet Mirrors、 多数の固定ミラー)の組み合わせで、光量を損なうことなく任意の形状の斜入射照明が可能になっている。
収差 (Aberration)
光学系において理想的な結像からのずれのこと。光学系において1点に集光できない場合に収差がある。収差には色収差(軸上および倍率)と単色収差であるサイデルの5収差(球面収差、コマ収差、非点収差、像面彎曲、歪曲収差)がある。
ゼルニケの多項式 (Zernike Polynominal)
円形の領域で定義される直交多項式。特に光学系において軸対称な波面収差を回折理論に基づいて解析的に取り扱うことができる。
タチアンの多項式 (Tatian Polynomial)
Annnular Zerinikeの波面収差の記述に相当。光学系のObscuration(遮光領域)が有る場合の波面収差を解析的に記述できる。
反射屈折系 (Catadioptric Optics)
ArF液浸露光装置で採用された反射ミラーと屈折レンズが混在した光学系。液浸露光によってレンズ開口数NAが1.35となり、屈折光学系では大口径化によるコスト増、設計困難さが避けられない。これを克服するため反射ミラーが一部組み込まれている。
変形照明 (斜入射照明)
光軸の中心を外した位置に絞りを入れることによりレチクルに対し露光光束を斜めに入射させる照明方法であり、解像度や DOF が向上する。絞り形状により輪帯照明、四(重)極照明などとも呼ばれる。
レイリーの式 (Rayleigh's Formula)
半導体素子の露光において、解像性(R)、波長(λ)、レンズ開口数(NA)がR=k1(λ/NA)で表される。ここでk1はプロセス定数である。また焦点深度(DOF)はDOF=k2(λ/NA2)(k2はプロセス定数)となる。
3.光源 (Source)
ArF Excimer Laser
ガス種としてフッ化アルゴンを用いた波長193 nmを発生するエキシマレーザ。
EUV Multi Layer Mirror
EUV光用のミラーに使われる金属多層膜。13.5 nm光用ではMo/Siの約60層のものが使われる。
EUV集光点出力 (EUV Power at IF Point)
発光点を第1焦点とする楕円鏡で第2焦点に集光された 13.5 nm を中心波長とし 2%のスペクトル帯域内の単位時間に放射されるEUVエネルギー総量。現状の技術では集光点出力は発光点出力の数分の一に減衰する。
In-Band EUV
EUV光源で発生するEUVスペクトルのうち、露光装置内で複数のミラーでの反射後、ウェハ面に到達できるスペクトル帯域。
KrF Excimer Laser
ガス種としてフッ化クリプトンを用いた波長248 nmを発生するエキシマレーザ。
Master Oscillator Power Amplifier System (MOPA)
高出力を得るために2台のエキシマレーザ放電管を結合させる方式の一種。1段目を共振器を組み、2段目は通過させ増幅器(Power Amplifier)として使用する。
Master Oscillator Power Oscillator System (MOPO)
高出力を得るために2台のエキシマレーザ放電管を結合させる方式の一種。1段目、2段目ともに共振器を組み、2段目もは通過させ増幅器(Power Oscillator)として使用する。
オプティカルパルスストレッチ (Optical Pulse Strech)
レーザ光の一部を周回させ時間差をつけて再度重ねる技術。光学材料のピーク強度耐性を緩和するために用いられる。
キャッピングレイヤー (Capping Layer)
マルチレイヤーの保護のために設けられる表層膜。汚染防止、酸化防止効果のある材料が選ばれる。
狭帯域化 (Line Nallowing)
共振器に光学分散素子を用いて増幅される波長選択範囲を狭くする技術。
極端紫外線 (EUV:Extreme Ultraviolet)
波長13.5 nmの極端紫外線光。
コレクターミラー、集光ミラー (Collector Mirror)
発光点で発生したEUV光の一部を切り出し反射後、第2焦点に再集光させる部分回転楕円鏡。
集光点輝度 (Brightness at IF Point)
単位面積、単位集光立体角当たりの集光点出力。
集光点出力
発光点を第1焦点とする楕円鏡で第2焦点に集光された 波長13.5nm を中心波長とし 2%のスペクトル帯域内の単位時間に放射されるEUVエネルギー総量。現状の技術では集光点出力は発光点出力の数分の一に減衰する。
SR (Synchrotron Radiation)
光速に近い電子が磁場により曲げられる時に発生する光。
シンクロトロン放射光 (SR:Synchrotron Radiation)
光速に近い電子が地場により曲げられるときに発生する光。将来のEUV露光において、高出力の波長13.5 nm光を放射できる光源として検討されている。
深紫外線 (DUV:Deep Ultraviolet)
波長200nm~300nm程度の紫外線帯域。波長193nmは大気中で伝播できない真空紫外線(VUV)との境界にある。
中間集光点 (IF:Intermediate Focus)
発光点を第1焦点とする楕円鏡に対する第2焦点。ここを通過後、露光装置の照明光学系で整形されたのちマスク上を照明。
デブリミティゲーション (Debris Mitigation)
EUV生成の際に発生するターゲット材料残渣(デブリ)の飛散・蓄積による内部汚染を抑制する技術。
発光点 (Plasma Point)
プラズマ発光が発生する輝点。
発光点輝度 (Brightness at Plasma Point)
単位面積、単位放射立体角当たりの発光点出力。
発光点出力 (EUV Power at at Plasma Point)
EUV光源プラズマから単位時間に放射される取り出し可能な波長13.5nmを中心波長とし2%のスペクトル帯域内のEUVエネルギー総量。
変換効率 (CE:Convergence Efficiency)
入力(DPPコンデンサ蓄積電力、LPPレーザ出力)に対する発光点のEUV出力。
放電生成プラズマ (DPP:Discharge Produced Plasma)
ガスの放電により生成されるプラズマ。波長13.5 nmのEUV光源として用いられる。
マルチフォーカシング (Multi Focusing)
発振波長に微小な擾乱を与え、結像位置を深さ方向に広げる技術。
レーザートリガー放電EUV光源 (LDP EUV Source:Laser Triggered Discharge EUV Source)
スズ液が塗布された2つの回転円盤に電圧を印加する。そこにトリガーレーザーを照射し、電極間にピンチ放電を生じさせプラズマを生成する。生成したプラズマからEUV光(波長13.5 nm)を取り出すEUV光源。
レーザー誘起プラズマ (LPP:Laser Produced Plasma)
レーザ生成プラズマ。波長13.5 nmのEUV光源として用いられる。
レーザー誘起プラズマEUV光源 (LPP EUV Source:Laser Produced Plasma EUV Source)
スズ微小粒子にCO2レーザーなどのレーザーを照射し、生成したプラズマからEUV光(波長13.5 nm)を取り出すEUV光源。
4.フォトマスク (Photomask)
EUVマスク (EUV Mask)
EUV露光で用いられるマスク。低膨張ガラス基板の表面に複数の組成から成る膜を積層したもの。半導体デバイスのパターンをEUV露光により、ウェーハ上のレジスト材料に縮小投影しパターニングを行うために用いる。
アクティニック検査 (Actinic Inspection)
露光光と同じ波長で検査すること。特にEUV光(波長13.5nm)を適用したEUVパターンマスク検査に関して、用いることが多い。
位相欠陥
光の位相がマスク上でずれる欠陥。EUVマスクやEUVマスクブランクスで、反射光の位相に影響する欠陥があると、露光時の転写パターンの寸法変化の要因になる。
位相シフトマスク (PSM:Phase Shift Mask)
マスク吸収体、基板間の位相や透過率を変化させることによって、光学コントラスト改善し、解像性や焦点深度(DOF:Depth of Focus)を増やしを転写特性を向上させたフォトマスク。開口部を通った光と開口部周辺の透過光振幅の干渉により、解像性能を向上させる。半透明な遮光膜をフォトマスク上に付けるとパターンの部分に局所的に位相を変えることが可能となる。この半透明薄膜を「位相シフタ」と呼ぶ。PSM には HT (ハーフトーン)マスク(Attenuate-PSMとも言う)や渋谷-レベンソンマスク(Alternative-PSMとも言う)などの種類がある。露光波長以下のパターンサイズのリソグラフィーでは標準的に使用されている技術。
OPC (Optical Proximity Correction:光学近接効果補正)
パターンの微細化に伴い、複数パターンの近接によって転写されたパターン形状が変化してしまう近接効果が顕著になるため、レチクル上に微細な補正パターンをいれることによって転写パターン形状をコントロールする技術。
吸収体 (Absorber)
EUVマスクにおいてマスクパターンとなるEUV光を吸収する膜。従来のフォトマスクの遮光膜に相当。
光源マスク最適化 (SMO:Source Mask Optimization)
マスクパターンに合わせて露光装置の照明形状を最適化する手法。
合成石英ガラス製フォトマスク基板 (Synthetic Silica Glass Photomask Substrate)
合成石英ガラスは赤外光から紫外域まで極めて高い透過特性と低熱膨張性に優れているため、半導体・液晶分野でのフォトマスク基板用材料として使用される。
渋谷―レベンソン型位相シフトマスク (Alternative PSM)
隣接する開口部を透過する光に180度の位相差を与えることで解像性能を向上することが可能となるフォトマスク。互いの0次光の振幅の符号が逆になり、開口部間の振幅は打ち消しあうことで解像性能が向上。
スーパーポリッシュ基板 (SP:Super Polish Plate)
両面をRa<0.2nm 以下の面粗さで研磨した合成石英基板。
ステンシルマスク (Stensil Mask)
パターンを形成するためにナノスケールの貫通開口を加工した電子ビームリソグラフィ(EBリソグラフィ:Electron Beam Lithography)用のフォトマスク。
静電破壊 (ESD:Electrostatic DamageあるいはElectrostatic Destruction)
静電気の放電によって破壊されること。帯電物が接近した場合にマスク上のパターン破壊が起こることがある。 (なお、略語のESDは、半導体デバイスになどにダメージを与える「静電放電」の意味でも使われる。)
多層膜 (ML:Multilayer)
EUVマスクにおいて吸収体の開口部でEUV光を反射させるためガラス基板と吸収体の間に設けた反射膜。EUV は通常の物質により反射されないため、異なる物質を交互に積層した多層膜を反射材として利用する。多層膜内部で光の強め合いの干渉効果を利用することにより、EUV を反射する。モリブデン(Mo)とシリコン(Si)の40対以上の多層膜が一般に使われている。
炭酸ガス添加超純水
炭酸ガス(CO2)を添加・溶解し、比抵抗を下げた純水。マスクブランクス、マスク・レチクルの洗浄工程では、洗浄水として一般的に、超純水が用いられる。しかし、超純水は絶縁性が高く、静電気が発生するため、炭酸ガス添加超純水が使用されることがある。
二流体洗浄
二流体洗浄とは、液体と圧縮空気を混合させ、微小ミスト状の液体を高速で被洗浄物に衝突させる物理式洗浄方式である。従来からある超音波洗浄方式に比較し、被洗浄物へのダメージを小さくすることができる。
バイナリマスク (Binary Mask)
単純な遮光膜のパターンのみで形成されるフォトマスク。単純に光を透過する/遮断するという機能のみのマスクで、主として露光波長以上の太さのパターン形成に用いられる。
反射防止膜 (AR:Anti-Rreflective Film)
一般的なCr膜のマスクブランクスは、Cr膜+CrxOyの2層構造となっている。CrxOyを反射防止膜と呼び、光の散乱および反射によるパターンの線幅変動を低減させる。
光近接効果補正 (OPC:Optical Proximity Correction)
露光時の光回折によりマスクパターンに忠実にレジストパターンが形成できない。これをあらかじめマスクパターンを変形してできるだけ目的のパターンに近づける手法。
ピンホール (Pin Hole)
遮光膜、レジスト膜、ペリクルなどに存在する微細な孔。
フォトマスク (Photmask) 、マスク (Mask)
ガラス基板の遮光膜に非常に微細な回路パターンを形成したもので、複雑な半導体の回路をシリコンウェハに焼き付けるときの原版。縮小投影の光リソグラフィでは、「レチクル」と呼ばれることも多い。
複屈折 (Birefringence)
物質の境界面で屈折する光が2つに分離する現象。物理的には 物質中を通過する光が振動面の向きにより進む速度が異なる、即ち、位相差が生じることを言い、複屈折が確認される物質を光学的に異方性があるという。複屈折量は位相差を波長で規格化し、長さの単位であらわすのが一般的で、例えば波長157nmの光で20°の位相差がある場合、157×20/360 = 8.6nm となる。
ヘイズ (Haze)
ArFリソグラフィなど照射光エネルギーにより、フォトマスク表面周辺のガス状物質の化学反応を誘発し、フォトマスク上に形成される固体状の成長性異物。
ME(E)F (Mask Error (Enhancement) Factor)
レチクル上の誤差がウェーハ上で拡大される比率。
マスクブランク (Maskblank)
ガラス基板に金属薄膜を成膜し、レジストを塗布したもの。マスク・レチクル製造工程で、パターニングをおこなう前の基板。主には合成石英ガラスにCr膜、MoSi膜、Si膜などをスパッタリング法によって成膜されたものが用いられる。
5.電子ビームマスク描画 (Electron-beam mask write)
可変成形 (VSB:Variable Shaped Beam)
開口を設けた2枚のアパーチャを光路上に設置し、アパーチャ間の電子ビームを偏向することによりその重なり具合を調整して、任意の大きさのビームを形成する。ポイントビームよりもスループットが高い。マスク描画装置ではこの方式が主流となっている。
近接効果 (Proximity Effect)
描画パターンの粗密によって現像後のレジスト寸法が変動する現象。後方散乱や前方散乱によって電子が意図しない部分にエネルギーを与えることによって生じる。後方散乱による近接効果を補正するのが一般的であるが、最先端のマスク描画装置では前方散乱による近接効果の補正も行っている。加速電圧が高いほど後方散乱径が大きくなり影響する範囲が広くなるが、描画エリアを後方散乱径よりも十分に小さなメッシュに区切って、各メッシュ毎のパターン密度を求め近接効果を評価して補正するパターン密度法が用いられている。
近接効果補正 (PEC:Proximity Effect Correction)
近接効果によるレジスト現像後のパターン寸法の設計値からのずれを予め計算で求め、これを補正するように描画する。露光量を調整することにより補正をおこなう手法が一般的であるが、マスクを用いて転写する場合はパターン毎に露光量を調整できないためマスクの寸法を調整する手法もある。
クーロン効果 (Coulomb Interaction Effects)
電子間に働くクーロン斥力により電子が理想の軌道から逸れることによってビーム形状のシャープネスが劣化したり焦点が変動したりして解像度が劣化する。ビーム電流が大きいほど、また加速電圧が低いほど電子ビームが広がる。電子ビームリソグラフィにおいてはこの効果のためにスループットと解像度がトレードオフとなる。各々の電子間の相互作用によって生じる力の総和やそれによる軌道の変位(ベルシェ効果、レフラー効果)を計算することができるが、電子ビームを連続体として見なし、その電場(あるいは磁場)から電子が受ける力(空間電化効果)として捉えることもできる。
後方散乱 (Backscattering)
入射電子が基板内で複数回散乱された結果、その一部は再びレジストに入射する。加速電圧が高いほど広がり(後方散乱径)が大きくなる。法線に対する散乱角の総和が90°よりも大きい場合と定義される。
前方散乱 (Forward Scattering)
入射電子がレジスト内で散乱されることにより電子ビームの軌道が広がる現象。加速電圧が低いほど、またレジスト膜厚が厚いほど広がり(前方散乱径)が大きくなる。法線に対する散乱角の総和が90°よりも小さい場合と定義される。
電子光学系 (EOS:Electron Optical System)
電子源、レンズ(照明、投影、対物)や偏向器等で構成される光学システム。電子源から放射された電子を所望のビーム形状に成形し、照射のON/OFFや基板上の任意の点に位置決めし収束させるための制御をおこなう。
電子ビーム直接描画 (EBDW:Electron-Beam Direct Write)
設計データに基づいて電子ビームにより半導体基板に直接パターンを描画する方法。スキャナなどの露光機で必要となるマスクを作製する時間とコストを節約できる利点があるが、スループットが低いのが欠点である。一般的に、ポイントビームや可変成形ビームが用いられている。
電子ビームマスク描画 (EBMW:Electron-Beam Mask Write)
設計データに基づいて電子ビームによりマスク基板にパターンを描画する方法。高い解像性が求められないラフ工程等のマスク描画ではレーザービームが用いられている。
点像強度分布関数 (PSF:Point-Spread Function)
光学伝達関数の逆フーリエ変換で、光学系の収差やアパーチャでの回折等による点光源の像面(空間領域)での拡がりを示す(光学系の点光源(δ関数)に対するインパルス応答)。EBリソグラフィではこれにレジストや基板内での電子散乱による拡がりも加え、レジストに蓄積されるエネルギー分布を表す関数としてEIDと同義で使われることがある。PSFと描画パターンの畳み込み積分から任意のパターンでの蓄積エネルギー分布が得られ、これを基に近接効果補正のための計算をおこなうことができる。
ブランキングアパーチャアレイ (BAA:Blanking Aperture Array)
マルチビーム描画装置において、分割された各々の電子ビームを独立してON/OFF制御するためのLSIとMEMSで構成されたアパーチャ。それぞれの開口に電子ビームを偏向するための電極が設置されており、個別に電圧が印加される。偏向された電子ビームは光路上のアパーチャによってカットされる。
ポイントビーム (Point Beam)
細く一点に収束させた電子ビームで強度がガウス分布になっている。ガウシアンビームとも呼ばれる。最小数nm程度まで収束可能で最も高い解像度が得られるが、スループットは低い。
マスクデータ変換 (MDP:Mask Data Preparation)
CADデータを描画機専用のフォーマットに変換すること。フォーマット変換だけではなく、種々の補正もデータに反映される。
マルチビーム (MB:Multi-Beam)
複数の電子ビームを用いて描画することによって、スループットの向上を図る方式。種々の方式が提案されているが、現在実用化されているマスク描画装置では、一つの電子源から放射された電子ビームを複数の開口を形成した成形アパーチャを通して分割し、その後それぞれの電子ビームをBAAで独立にON/OFF制御している。最先端のマスク描画装置で実用化されている。
露光強度分布関数 (EID Function:Exposure Intensity Distribution Function)
レジスト膜中での蓄積エネルギー分布を入射点からの距離の関数として表したもの。最も簡単で一般的な関数としては、前方散乱と後方散乱の寄与をそれぞれガウス分布で近似しそれらの和で表されるが(ダブルガウシアン)、3項以上の関数も提案されている。ビーム分布を考慮する場合はこれをEID関数と畳み込み積分をするが、前方散乱径に比して十分小さい場合はこれをガウス分布で表し前方散乱項との二乗和平方根を取る手法もある。
6.マスク検査 (Mask inpsection)
CD欠陥 (CD Defect)
マスクの設計データに存在しない寸法違反。
位相欠陥 (Phase Defect)
EUVマスクにおいて、多層膜内や多層膜下に埋め込まれた欠陥。
遠紫外光検査 (DUV Inspection)
光源として紫外線光源を用いた検査。一般的に、約190 nmから220 nmの波長を持った光による検査を意味する。
加速電圧 (Acceleration Voltage, Accelerating Voltage)
電子が陰極から陽極へ加速される時の電位の差。単位は[V]であるが、電子のエネルギーを表す場合には[eV]を用いる。
感度表 (Sensitivity Table)
検査感度の能力を表現する表。
疑似欠陥 (False Defect)
実際には存在しないが、検査装置が疑似的に検出する欠陥。
疑似欠陥 (Nuisance Defect)
実際に存在する欠陥であるが、デバイスには影響がないために無視してよいもの。
形状欠陥
マスクの設計データに存在しない形状違反。
欠陥自動分類 (ADC:Automatic Defect Classification)
検査によって確認された欠陥をその種類別に自動的に分類すること。
再認定 (Re-Qualification)
製造プロセスに適していると決められた装置の保守(部品の交換等)後に再度プロセスへの適正を確認すること。
遮光帯 (Black Boarder)
マスク上のパターン領域の周辺に設けられている10 mm程の幅を持った光を遮断する領域。露光プロセスにおいて望ましくない光がウェーハに漏れないようにするもの。
成長性結晶 (Opaque)
電子や光の長時間の照射によって、マスク表面に結晶が成長したもの。
ダイ・トゥー・ダイ (Die to Die)
マスク上に繰り返し設けられているパターンを個別にスキャンし、同じ形状を持ったもの同士を比較する検査方式。設計データが無くても検査が可能である。
ダイ・トゥー・データベース (Die to Database)
マスク上に形成されているパターンと、設計データを比較する検査方式。
作り込み欠陥マスク (Programmed Defect Mask)
検査装置の欠陥検出能力を確認する為に、欠陥を意図的に作りこんだ評価用マスク。
デュアル・ポッド (Dual Pod)
マスクを収納する容器。異物の混入を防ぐため、二重になっている。一般的には、EUV露光のために用意された容器。
電子線検査 (Electron Beam Inspection)
加速された電子を基板表面に当て、反射電子を検出して画像を形成する検査。
二次電子 (Secondary Electron)
電子が基板に入射した際、二次的に放出される電子。生成効率は基板の表面形状や材質に依存する。
ブリッジ欠陥 (Bridge Defect)
独立している形成されたパターン間の結線。不十分なエッチングによって生じることがある。独立して形成さているパターン間の結線。エッチング不足によって生じることが多い。
ペリクル (Pelicle)
マスクのパターン表面に異物が付着しないようにマスク表面近くに取り付けられた薄膜。ペリクル上に付着した異物は焦点からずれているためウェハには結像されない。
補助パターン (SRAF: Sub-Resolution Assist Feature)
半導体パターンをウェハに投影する際、エッジを強調して解像度を上げるためにパターンの周辺に設けられる限界解像度以下の補助パターン。
マスク修正装置 (Mask Repaire Equipment)
マスク上で検出された欠陥を修復する装置。
マスク洗浄装置 (Mask Cleaning Equipment)
エッチング等の後に、マスクの表面から生成された異物を除去する装置。
マルチカラム方式 (Multi-Colmun Method)
検査のスループットを向上させるために複数の電子ビームを用いる一つの方式。複数のカラムがあり,それぞれのカラムに電子源が備えられる。
マルチビーム方式 (Multi-Beam Method)
マルチビームを用いた検査方式。
リターディング電圧 (Retarding Voltage)
基板入射直前に電子を減速させるために、基板に印加する電圧。
7.レジストプロセス (Resist Process)
ASD (Area Selective Deposition)
所望のエリアだけに、選択的に成膜をおこなうボトムアッププロセス。下地のパターン表面の特性に応じて、選択的に所望の膜を成膜する。
ArF液浸レジスト (ArFi Resist、 ArF imersion resist)
波長193 nm のArF液浸リソグラフィで用いるレジスト。水に浸されて露光されるため、水とレジストの間にトップコート膜を挟んで露光するケースがある。 トップコートを使用しない場合は、水の浸透を抑えるためのレジスト組成上の工夫をして使用される。
ArFレジスト (ArF Resist)
波長193 nm のArFリソグラフィで用いるレジスト。
EBR処理 (EBR:Edge Bead Removal)
ウェーハ基板の端面付近のレジスト膜を除去する処理。レジストのスピン塗布後に、ウェーハを回転しながらウェーハエッジ部にシンナーを吐出しレジストを溶解し除去する。
EBレジスト (EB Resist)、電子線レジスト (Electron Beam Resist)
電子線リソグラフィで用いるレジスト。
EUVレジスト (EUV Resist)
波長13.5 nm のEUVリソグラフィで用いるレジスト。
g線レジスト (g-line Resist)
波長435 nm のg線リソグラフィで用いるレジスト。
KrFレジスト (KrF Resist)
波長248 nm のKrFリソグラフィで用いるレジスト。
i線レジスト (i-line Resist)
波長365 nm のi線リソグラフィで用いるレジスト。
ウェット現像 (Wet Development 、Aquaous Development)
アルカリ現像液や有機現像液を薬液として用いる湿式の現像方法。
化学増幅型レジスト (CAR:Chemically Amplified Resist)
露光により発生する反応触媒による反応で、反応が増幅し、現像液への溶解性が変化するレジスト。その結果、高感度にパターン形成が可能となる。一般的には、ヒドロキシ基、カルボニル基など親水性官能基を保護した高分子と、光により強酸を発生する光酸発生剤(PAG:Photo Acid Generator)を混合した材料を用いることが多い。露光により発生する酸で露光部の脱保護反応が酸触媒反応で進行し、極性変化が起こる。この反応により、露光部と未露光部の現像液への溶解性が変化しパターンを形成できる。KrFリソグラフィ、ArFリソグラフィ、ArF液浸リソグラフィ、EUVリソグラフィ、EBリソグラフィで広く用いられている。
下層反射防止膜 (BARC:Bottom Anti-Reflective Coating)
レジストの下面に塗布して、リソグラフィ光の反射を抑える膜。レジストの密着性を向上したり、レジストの形状を調整したりできる。
下層膜 (BL:Bottom Layer)
レジストと中間膜の下に塗布して用いる膜。中間層と組み合わせ反射防止の効果や、平坦化の効果、エッチングマスクとしての機能がある。
欠陥密度 (Defect Density)
単位面積当たりのパターン欠陥密度。1 cm2 あたりの欠陥数で表記することが多い。
現像 (Development)
リソグラフィにより反応したレジストの像を形成するプロセスのこと。リソグラフィにより、レジストは露光部が反応し、露光部で選択的に現像液への溶解性が変わる。PEB後に現像という薬液処理をすることで、レジストパターンを形成できる。
現像液 (Developer)
反応後のレジストの露光部あるいは未露光部を溶解してパターンを形成するために用いる薬液。現像液としてはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液が量産で広く用いられている。TMAH現像液はアルカリ性で、露光後のレジストの極性が高い部分を選択的に溶かす。多くの場合、カルボン酸や水酸基がアルカリ水溶液中でイオン化し溶け出す現象を利用してパターンを形成する。現像後は、TMAHを除去するために、「リンス」と呼ばれる水洗処理をおこなう。また、酢酸エチルなどの有機溶媒を現像液として用いて、レジスト露光後の極性が低い部分を選択的に溶かす「ネガ型現像技術(NTD: Negative Tone Development)」も使われている。
ストキャスティクス欠陥 (Stochastics Defect)
確率論的なばらつき(ストキャスティクス)に起因するレジストパターンの欠陥。特にEUVリソグラフィで顕著にみられるようになった。パターンがつながるブリッジ欠陥(スカム欠陥)、パターンが断線するブレーク欠陥(ピンチング欠陥)、パターンが欠損するミッシング欠陥、パターンが結合するキッシング欠陥などが見られる。微細化にともないパターン内の光子数が少なくなる影響によるフォトンストキャスティクスや、レジスト組成物の空間的な分布の影響によるケミカルストキャスティクスにより欠陥が発生する。
スピンコート (Spin Coating)
コーターと呼ばれる塗布装置でレジスト溶液をウェーハ上に滴下し、ウェーハを回転させ塗布すること。
多層レジストスタック (Multi-layer Resist Stack)
レジストの下面に、複数の被加工スタックを用いるレジスト積層構造。多層膜を用いて光の反射を抑えてリソグラフィの特性を改善したり、下層膜を用いてレジスト面を平坦化したり、エッチングによるパターニング転写を容易にしたりできる。
多層レジストプロセス (Multi-layer Resist Process)
複数種のレジストを多層に塗布、形成することにより、レジスト表面を平坦化し、レジスト層内又は基板表面からの光、又は電子線の反射、散乱効果を減少させて、解像力を向上させる方法。
脱水ベーク (Dehydration Bake)
レジスト塗布前の基板表面に付着した水分を除去するためにおこなうベーク。プロセス性能を安定化するためにおこなう場合がある。
中間層膜 (ML:Middle Layer)
レジストと下層膜の間に塗布して用いる膜。有機下層膜と組み合わせて用いることが多い。シリコン(Si)を含有するケースも多い。レジスト膜をMLに転写後に、酸素系のエッチングで厚い有機下層膜にレジストパターンを転写でき、エッチングのパターン転写を容易にすることができる。
塗布現像装置 (Coater and Developer)
レジスト塗布と露光後の現像をおこなう装置。塗布装置、現像装置と別な装置の場合もある。露光後の引き置きの影響を抑えるため、露光機に連結(インライン)され、レジスト塗布と露光後の現像を同じ装置でおこなうことも多い。
ドライ現像 (Dry Development)
薬液を用いないで、ドライエッチングで露光部あるいは未露光部を気化させる乾式の現像方法。
ネガ型レジスト (Negative Tone Resist, NTD Resist)
露光により、未露光部(遮光部)が溶け出し露光部が残るレジストのことを「ネガ型レジスト」と呼ぶ。ネガ型になるように現像する方法をネガトーン現像(NTD:Negative Tone Development)という。
パターニング (Patterning)
リソグラフィやエッチングにより、ウェーハ上にデバイスパターンを形成すること。
フォトレジスト (Photoresist)
紫外線(水銀ランプやレーザー光)で感光するレジスト。
ポジ型レジスト (Positive Tone Resist, PTD Resist)
露光により、露光部が溶け出し未露光部(遮光部)が残るレジストのことを「ポジ型レジスト」と呼ぶ。ポジ型になるように現像する方法をポジトーン現像(PTD:Positive tone development)という。
ポストアプライベーク (PAB:Post Apply Bake)、プリベーク (Pre Bake)
レジスト塗布後・露光前のベーク。レジスト溶剤を乾燥させるためにおこなう。
ポストクスポージャベーク (PEB)
露光後にウェーハを高温でベークする熱処理のこと。レジスト内にさらに化学反応を起こしたり、レジスト内で発生する光の定在波の影響でレジスト側壁が波打つ現象を反応物の拡散で低減したりする。
ポストベーク (Post Bake)
現像後にレジストを焼しめたり、現像液・リンス液を乾燥したりするためにおこなう熱処理。
メタルオキサイドレジスト (MOR:Metal Oxide Resist )
金属酸化物の反応を利用して、露光部、未露光部の溶解性を変化させパターンを形成するレジスト。露光部の凝集反応を用いて露光部を現像液に不溶化するものが多い。解像力が高いため、EUVリソグラフィで用いられる。
誘導自己組織化 (DSA:Directed Self Assembly)
ブロックポリマー(極性の違うポリマー同士を重合し、熱による相分離で自己配列し、パターンを形成する技術。L/Sやホールが形成できる。DSAリソグラフィといわれることがある。基板上の極性をもちいてパターンを配向させるケモエピタキシーと、基板の段差をもちいてパターンを配向させるグラフォエピタキシーがある。リソグラフィで形成したガイドパターンを基にピッチを分割し、微細なパターンを形成することもできる。
レジスト (Resist)、フォトレジスト (Photoresist)
リソグラフィで、回路パターンを転写する際に使用する反応性材料。露光により現像液への溶解性が変化し、パターンが形成される。
レジストフィルター (Resist Filter)
レジストの薬液を塗布する際に液中のゴミなどをろ過するための部品。塗布欠陥を低減できる。
レジスト溶剤 (Resist Solvent)
レジストの組成物を溶解し、スピンコートを可能にする有機溶剤。例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などが用いられる。
8.リソグラフィ評価指標
MEEF (Mask Error Enhanced Factor)
マスク上の寸法誤差が露光されたウエハ上で拡大される比率。
NILS (Normalized Image Log Slope)
リソグラフィで、定量的に像の質を表す際に用いる指標で、パターンエッジでの像の傾きを光強度で規格化し、さらにパターン幅wで規格化した値である。光強度の対数値の傾きに相当する。NILSはパターン寸法が違う場合でも、像の質を定量的に表現できる。
Z-ファクター (Z-Factor)
Resolution3XLWR2XDoseでレジストの性能を総合評価する指標。
アライメント (重ね合わせ) 精度 (Overlay)
露光時の露光パターンと下地層との位置ズレを示す。下地層のアライメントマークとレジストパターンの位置から評価。同一露光装置でのアライメント精度はDedicated Chuck (Singel Machine)Overlay、異なる露光機間のアライメント精度はMatched Machine Overlayと呼ばれる。
イメージ・ログ・スロープ (ILS:Image Log Slope)
パターンエッジ領域での光学コントラストの対数を表す。これが大きいほど解像性が優れ、LWRも低減される。
エッジプレースメントエラー (EPE:Edge Placement Error)
レジスト像のエッジが所望の場所からどれだけ離れているかを評価する尺度。矩形のマスクパターンと露光したレジストパターンのエッジ部を比較すると、光回折により差分が現れる。解像限界付近では、エッジ領域の欠落が増大し、差分が大きくなる。
解像度 (Resolution)
パターン形成時の最小加工寸法のことで、密パターンのハーフピッチで表すことが多い。投影光学系の開口数(NA)を上げるか露光波長を短くすることで解像度が上がる。そのほか、レジストや露光機の光学条件の設定、マスク特性などでも解像度は影響を受ける。
感度 (Sensitivity)
レジストを露光し、ターゲットサイズを得えるための露光機の露光量。感度がいいとは露光量が少ないことを意味する。
焦点位置精度 (Focus Uniformity)
露光領域内の焦点位置のバラつき精度。
焦点深度 (DOF:Depth of Focus)
パターンの寸法のスペックの上下限値に対応する露光焦点の深さのこと。例えば、寸法の±10%のスペックを満たすフォーカスの範囲をフォーカスの広さで表現する。
パターン寸法均一性 (CDU:Critical Dimension Uniformity)
レジスト寸法(CD:Critical Dimension)の均一性を示す。ウェーハ内の複数点のCDを計測し、ばらつきを3σ値(標準偏差の3倍)で表記することが多い。
プロセスウィンドウ (PW: Process Window)
CDフォーカスカーブから、パターンの寸法のスペックの上下限値に対応する露光量とフォーカスをプロットした際の、フォーカスマージンや露光量マージンのこと。特別CDへの要求が厳しくないレイヤーでは、寸法の±10%のスペックを満たす焦点深度(DOF)や露光量裕度(EL)で定義することが多い。
ラインエッジラフネス (LER:Line Edge Roughness)
パターン転写の後、現像後、およびエッチング後のパターンエッジのラフネスが問題となる。このラフネスをLERと呼ぶ。ばらつきを3σ値(標準偏差の3倍)で表記することが多い。
レジストライン幅ラフネス (LWR:Line Width Roughness)
レジストを露光、現像した際に現れるレジストライン幅のラフネス。光コントラストが低いと値が大きくなる。ばらつきを3σ値(標準偏差の3倍)で表記することが多い。
ローカルCD均一性 (局所寸法均一性、LCDU:Local CDU)
レジスト寸法(CD:Critical Dimension)の局所的な均一性を示す。同じ露光ショットでの、ローカルでのばらつきをしめす。 解像限界付近では、レジスト成分の不均一分布、露光ドーズ量(光子数)、光学コントラスト(露光装置のNAに依存)によって決まるとされている。
露光量裕度 (EL:Exposure Latitude)
ベストフォーカスでの、パターンの寸法のスペックの上下限値に対応する露光量の余裕度のこと。例えば、寸法の±10%のスペックを満たす露光量の範囲を、ターゲット値の露光量(ベスト露光量)に対して、%値で表したもの。
9.ナノインプリントリソグラフィー (NIL:Nanoimprint Lithigraphy)
RLT:Residual Layer Thickness
ナノインプリントによって形成されたレジストパターン凹部の残膜厚。
TTMアライメント (Through The Mask Alignment)
ウェーハ上に形成されたアライメントマークを、マスク上のマークを透過した光を用いて相対位置合わせをおこなうアライメント方式。
UVナノインプリント方式 (UV NIL)
モールド上のパターンをUV硬化性樹脂に押し付け、紫外光を照射し樹脂を硬化させることでパターンを複製する方式。常温での作業が可能なため、パターンの再現制度が高いという特徴がある。
UV NIL用合成石英ガラス製モールド (Synthetic Silica Glass Mold for UV NIL )
UVナノインプリント方式ではモールドに紫外光を透過させて基板に塗布した樹脂を硬化させる為、高紫外域透過性を有する合成石英ガラス製基板表面に凹凸のパターンを形成したモールドが用いられる。
高次ディストーション補正 (HODC:High Order Distortion Control)
ショット中心に対して、X、Yの2次以上の関数で表現されたウェーハ上のショット形状の変形に対して、ウェーハ又はマスクの投影像を変形させてショット全体の形状を合わせる補正方向。ナノインプリントではウェーハのショット内温度分布に変化を与え熱膨張差によって補正している。光リソでは、マスクパターンを投影光学系内のレンズの変位等で光学ディストーションを変化させたり、スキャナーの場合はマスクとウェーハの相対位置を変位させて補正している。
シリコンモールド (Silicon Mold)
主に熱ナノインプリント方式で使用されるモールド。シリコン基材上に塗布された感光性樹脂に電子ビームでパターンを描画し、ドライエッチング法により深堀りして作製。
石英モールド (Quarz Mold)
主にUVナノインプリント方式で使用されるモールド。半導体用フォトマスクと同じ石英材料を使用するので、剛性と平坦性が高いのが特徴。
ディスペンサー (Dispenser)
ナノインプリントの装置で、レジスト(UV硬化樹脂)をウェーハ上に塗布する機構。
ドロップパターン (Drop Pattern)
ディスペンサーによって塗布されたレジスト液滴の分布。
ドロップレシピ (Drop Recipe)
回路パターン情報に応じて、ディスペンサーでインプリント前にレジストをインプリントエリアに滴下するレジスト液滴のレイアウト情報。
ナノインプリント (NIL:Nano Imprint Lithography)
ナノインプリントとは、原版となるモールド(金型)を型押しすることで、数十ナノメートル単位のパターンを転写する微細加工技術。
ナノインプリントリソグラフィー (NIL:Nanoimprint Lithigraphy)
レジストを塗布したウェーハ基板上に、モールド(マスク)を押し付け、UV光を照射することでレジスを硬化させてレジストパターンを形成するリソグラフィー。マスク板を外した後は、従来工程と同様にエッチングをおこない、ウェーハ上に回路パターンが形成される。
熱ナノインプリント方式 (Thermal NIL)
モールド上のパターンを熱可塑性樹脂に強い圧力で押し付け、加熱後冷却することでパターンを複製する方式。加熱により軟化する材料であれば、さまざまなものに対し直接加工することが可能。
マスターマスク (Master Mask)
ナノインプリントリソグラフィーで、ウェーハ上にレジストパターンを形成するレプリカマスクを作成するために、電子ビーム直描等で作成された原版。
モールド (Mold)、マスク (Mask)
ナノインプリントリソグラフィーで用いる、転写する回路パターンを凹凸のパターンで形成された原版。光リソグラフィーのマスク(レチクル)の役割に相当するため、マスクと呼ばれる場合もある。
レプリカマスク (Replica Mask)
ウェーハ上にレジストパターンを形成するために使用される、マスターマスクから複製されたモールド(マスク)。ナノインプリントではモールド(マスク)の寿命が有限であるため、マスターマスクを使用するとコスト的に見合わない。レプリカマスクは、マスターマスクを原版としてナノインプリントで作成される。
10.その他
APC (Advanced Process Control)
フィードバック、フィードフォワードによりプロセス性能(CD、OL等)の向上を目指すシステムである。近年は、データのサンプリングのための計測機器を装置内に組み込む取り組みが進められている。
ULPA (Ultra Low Penetration Air) フィルタ
定格風量で粒径が 0.15 μm の微粒子に対し 99.9995% 以上の粒子捕集率があるフィルタ。