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株式会社アルバック
(2024.12)
電子機器事業部 技術部 1課 上久保 直紀
この業界にはいったきっかけ、動機
学生時代、超伝導体の物性評価に取り組む中で真空技術に触れ、その重要性と奥深さに興味を持ったことで半導体業界を知り、将来性に魅力を感じたことがこの業界を志望するきっかけになりました。真空技術が半導体技術の精度を左右する重要な役割を果たしていることを実感し、その応用範囲の広さに魅了されました。半導体製造において真空技術は不可欠であり、スマートデバイスや自動運転技術といった最先端技術を支える分野に携わりたいと考え、真空総合メーカーであるアルバックに入社を決めました。
仕事内容、働き方、日常のできごと
アルバックは真空技術をコアに、進化し続ける社会に必要な半導体や電子デバイス業界を製造装置で支えている会社です。製造装置だけでなく、装置周辺で使われるポンプや電源、計測機器、材料も開発・製造している世界でもめずらしい真空総合メーカーです。主な装置は、スパッタ、真空蒸着、CVD、エッチング、イオン注入装置です。
私は2022年からスパッタ装置の開発・製造を担う部門に所属しています。主な業務は、装置仕様の検討、社内各部門への仕様入力、お客様サポート、装置開発です。

【装置仕様検討】
装置仕様検討は、お客様の要望や用途に応じて、装置の設計や機能、性能の要件を定める重要なフェーズです。真空や半導体製造プロセスに特有の制約を考慮しながら、部品の選定や装置の機能が最適化されるように検討を進めます。仕様検討の際は、スパッタ技術の開発部門や設計者と密に連携し、製造装置運用上発生し得る技術的なリスクやお客様のデバイス製造上の制約を精査する必要があります。お客様のニーズに応えながらも、製造装置としての実現性と信頼性を両立させるために慎重な判断が求められます。
【仕様入力~設計・製造】
仕様が決定した後、社内各部門への仕様入力を行います。仕様入力とは、製造や組立、品質管理などの各部門が正確に製品をつくり上げられるよう、必要な仕様情報を伝達することです。情報の正確性が最も重視されるフェーズです。仕様に誤りがあると、製造過程でのエラーやコスト増加、納期遅延といったリスクに繋がるため、細心の注意を払って入力を行います。また、入力内容を関係部門と共有し、相互の理解を深めることも重要です。このフェーズで各部門と協力しながら情報を伝えることで、製品の品質向上とスムーズな製造を実現します。
【納品~お客様サポート】
社内での装置の製造が完了したら、装置をお客様の工場に納入し、装置検査を行います。これは、装置が設計通りの性能を発揮し、安定稼働できるように動作テストや調整を行う重要なフェーズです。技術的な問題が発生した場合には速やかに対応し、お客様との打ち合わせを通じて追加や改善リクエストにも柔軟に対応します。また、操作説明やメンテナンス方法をレクチャーすることで、お客様が安心して装置を運用できるようサポートし、長期的な信頼関係を築くことも重要です。
これらの過程で装置の設計や製造、稼働中にトラブルが発生した場合、迅速かつ的確な対応が求められます。トラブル対応では、原因究明のために各種データを収集し、設計や製造部門、管理部門と協力しながら解決策を検討します。特にお客様の製造ラインに影響が及ぶ場合、問題の早期解決が不可欠です。技術的な知識と判断力が求められると同時に、お客様や社内各部門とのコミュニケーションも重要です。トラブルが発生しないことが一番ですが、発生してしまった場合の対応がお客様とのより強固な信頼関係を築き、再発防止策を講じることが品質向上と顧客満足度の向上にも繋がります。
このように、装置の見積もりから仕様の検討、社内各部門への仕様入力、お客様サポートに至るまでの業務は一連の流れで進行し、各フェーズが製品の品質と顧客満足度に大きく影響を与える重要な役割を担っています。


【装置開発】
装置開発業務では、市場の動向を把握し、将来求められる装置の機能や性能を見極めた開発が重要です。これからの市場ニーズに対応できるよう、先端技術を取り入れ、装置性能やスパッタ技術の性能向上を目指しています。
また、お客様によって求められる装置の機能や性能が異なるため、個別ニーズに応じたカスタマイズが必要です。お客様が特定のプロセスや製品に対応するための機能を求める場合、その仕様に合わせて細部の調整や部品の選定を行います。こうした開発には、お客様との密なコミュニケーションと、迅速かつ柔軟な対応が必要です。私たちのつくる製造装置の価値を最大限に高めることを目指し、市場とお客様の両方に目を向けて開発をしています。
仕事のやりがい/厳しさについて
半導体業界にかかわる仕事のやりがいの一つは、社会の発展に直接貢献しているという実感が持てる点です。スマート化していく現代の社会インフラを支える製造装置の開発・製造に携わることで、自分の仕事が世の中の進歩に貢献しているという強い達成感を得ることができます。
前述の装置開発業務は、半導体の製造工程には欠かせない装置をつくり上げるため、業界の最先端を支える重要な役割を担っています。半導体デバイスの微細化や高性能化の要求に応じて、新しい装置の開発が進む中で、自分の技術や知識が直接製品の品質や生産性に影響を与えることに大きな責任感とやりがいを感じます。
一方で、半導体製造装置の開発には厳しい側面もあります。まず、技術の進歩が非常に速く、新しいプロセスや材料が次々と導入されるため、常に最新の知識を得て、適応していかなければなりません。技術革新が進む中で、現状に満足することなく、継続的な学習とスキルアップが求められるため、自己管理や勉強を怠ると取り残されてしまう厳しさがあります。
さらに、半導体はナノメートル単位で構成されており、製造工程でわずかなズレや不純物が入り込むと、製品の性能や信頼性に大きく影響します。したがって、半導体製造装置には非常に高い精度や品質が求められます。お客様の要望や期待に応えるためには、装置の信頼性や性能を最大限に追求する必要があり、製造過程においても妥協が許されません。このプレッシャーに耐え、着実に結果を出し続けることは決して容易ではありませんが、技術者としての責任感と成長にも繋がる経験です。
加えて、お客様の納期や仕様に応じた柔軟な対応も求められるため、スケジュール管理やチーム間の連携も重要です。特に、トラブルが発生した場合、状況に応じた判断力と、社内メンバーだけではなく、アルバック製品のカスタマーサービスを担うグループ会社(アルバックテクノ)との円滑なコミュニケーションが欠かせません。このように、高度な技術力と同時に、協調性や判断力を求められる点も、仕事の厳しさの一つといえます。
また、海外での装置立ち上げやサポートをする際は、異文化での課題解決や現地技術者とのコミュニケーションに難しさを感じることもあります。しかし、グローバルに仕事ができる環境では、自分の視野を広げ、スキル高める貴重な経験が得られると考え、前向きに取り組んでいます。以上のように、半導体製造装置に携わる仕事にはやりがいと厳しさが共存しています。
この業界に入ってよかったこと
半導体業界に入って良かったことは、技術者としてスマート社会を支える最先端技術に直接関わり、社会の発展に貢献できるやりがいを実感できる点です。スマートフォンやAI、自動運転など、日々の生活を豊かにする技術の根幹を担う半導体は非常に重要であり、その製造装置に携わることで、自分の仕事が未来に繋がっていると感じられます。絶え間ない技術革新の中で自身も成長しながら、社会にとって意義のある分野で働けることに満足しています。
現在、私はMEMS(微小電気機械システム)やパワーデバイス向けの300mm基板対応装置の開発に携わっています。MEMSはIoTや医療分野での需要が急増しており、パワーデバイスは電力効率の向上に不可欠です。この分野での技術革新は、エネルギーの効率化や次世代デバイスの進化に直結しているため、私の仕事が社会の未来に大きな影響を与えると感じています。特にMEMSの分野ではスパッタ装置のプロジェクトリーダーを任されており、アルバックの未来を背負っているプレッシャーを感じながらも、自社だけではなく、スマート社会の未来を築いていくという、希望ややりがいにもあふれています。これは学生時代には経験できなかった、この業界にいるからこそのものだと感じています。
学生の皆さんには、半導体業界は自らの技術が直接社会に貢献できる非常にやりがいのある分野であり、挑戦と成長の機会が多い業界であることをお伝えしたいです。今後も、装置開発を通して新たな技術に挑み、顧客満足度と製品品質の向上に努め、信頼される技術者として成長していきたいと考えています。
最後に、半導体業界は最も注目されている業界の一つということで、多忙でプライベートな時間が取れないというイメージを持たれるかもしれませんが、実際には仕事とプライベートを両立し、充実した生活を送ることができます。
私自身、休日には趣味の釣りや星空撮影、旅行などを楽しんでいます。釣りに出かけて自然の中でリフレッシュしたり、星空を撮影しながら、日常とは違う広がりのある時間を過ごしたりしています。また、旅行も楽しみの一つで、新しい景色や文化に触れ気分転換を図ることが、仕事に新しい視点やアイデアをもたらしてくれます。グローバルな業界なので、海外出張中の休日は観光なども楽しむことができます。これらのアクティビティを通じてリラックスし、リフレッシュすることで、翌週からの業務にも前向きに取り組むことができると感じています。
このように、半導体業界ではキャリアを積んで成長を目指しながらも、プライベートも大切にできる環境が整っています。学生の皆さんにも、半導体業界は自分らしい時間も大切にしつつ、やりがいある仕事ができることを知ってもらいたいです。
スマート社会の発展に貢献できるこの業界で、皆さんもぜひ一緒に未来を切り拓いていきましょう。
