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株式会社テセック
(2023.2)
テスタビジネスユニット設計グループ 前田 優吾
初めに
株式会社テセックの前田優吾と申します。本稿を通して、学生や就職活動中の方々へ、テセックと半導体検査装置についてご紹介いたします。
テセックは半導体検査装置に分類されるテスタ・ハンドラの開発設計、製造、販売およびアフターサービスを主な事業としております。"半導体検査装置"という言葉を日常生活での会話やテレビで流れるニュースなどで耳にする機会はほとんどないので、学生や就職活動中の皆さんにとっては、それがどの様なものなのかを想像しにくいのではないでしょうか。半導体検査装置は半導体の製造工程において、非常に重要な役割を担っており、必要不可欠な存在となっています。例えばパソコンなどの電気製品は複数の半導体デバイス(以下、デバイス)が組み合わされて作られています。もし、使われているデバイスに不良品が紛れ込んでいた場合、どうなるでしょうか?不良のデバイスは設計者が意図した動作をしないため、電気製品の動作不良などの不具合や故障を引き起こします。最悪の場合、事故にもつながりかねません。これらの問題が製品出荷後に発覚した場合には、早急な顧客への謝罪とリコールによる回収が必要になります。
このようなトラブルを事前に回避するためには、大量に生産されたデバイスを市場へ出荷する前に、あらかじめ電気的特性を検査し、良品/ 不良品を判定・選別しなければなりません。この作業工程が半導体検査装置の役割であり、使用目的となっています。このほか、新規に設計試作したデバイスの電気的特性を確認するために開発現場で使用する事例もあります。
半導体デバイスは、家電製品をはじめ電気自動車や電気を使うあらゆる製品に使われ、人々の快適な生活を支えています。テセックはその縁の下の力持ちとなり、優良なデバイスを世に送り出す半導体検査装置を作り続けています。
今回は貴重な機会をいただきましたたので、テセックの主力製品であるテスタ・ハンドラの概要についてご説明いたします。また、私自身が業務を進めるうえで重要と感じたことを、体験談をもとにお伝えいたします。
テスタ・ハンドラの概要
テスタとは半導体デバイスの電気的特性を高速・高精度で測定する装置を指します。その役割はデバイスが設計仕様通りに動作しているか否かを判定することです。具体的には、電気的特性の検査において、テスタはデバイスに電気信号を与えることで出力される電気信号を測定し、その測定結果と設計仕様をもとに設定された期待値を比較することで、良否判定します。
テスタを用いなくても、電気信号を与える信号源や電源とデバイスから出力された信号を測定できる計測器を用いれば電気的特性を測定することは可能です。しかし、実際のデバイスの検査では、1つのデバイスに対して複数箇所へ同時に電気信号を与えて測定する必要があるため、必要数量分の機器を用意して指定の箇所へ繋げなければなりません。この環境下では、検査項目ごとに機器の設定やデバイスとの接続を手動で行うことになり、結果的に、大量生産されるデバイスを全数検査するには途方もない時間がかかってしまうため、現実的ではありません。
これに対してテスタの場合は、指定の検査項目と検査条件をあらかじめパソコンから設定し、デバイスをテスタへ接続さえすれば、後はスタートボタン1つで指定した検査項目を全て自動で測定し、瞬時にそのデバイスの良否判定を行ってくれます。しかし、テスタはあくまでもデバイスの測定と測定結果に基づいて良否判定を行う装置なので、大量生産されているデバイスの測定を行う場合は、測定の度にデバイスを付け替える機能を担うハンドラの助けが必要となります。
ハンドラは接続されているテスタに大量のデバイスを1つずつ順に供給し、検査後にテスタが出力した良否判定結果をもとにデバイスの振り分けを行います。言うまでもなく、ハンドラはこの作業を人間の手よりもはるかに高速かつ精密に行う事ができます。
このようにハンドラとテスタを組み合わせることで、1組の半導体検査装置ができ上がり、大量生産されたデバイスを全自動で高速かつ高精度に検査し、良否選別を行う事が可能となります。
業務を通じて重要と感じたこと
テセックに入社して半年間の研修の後、テスタの設計を主な業務とするTBU(Tester Business Unit)設計グループに配属となりました。
配属当初から6年目の今に至るまで様々な作業に携わりましたが、これまでを振り返ると自分はまだまだ勉強不足であり、日々の勉強の積み重ねが重要であると実感しています。
例えば、製品で使用している部品が生産中止になり、代替品を検討しなければならない場合です。地味な作業ですが、同じテスタを何年もの間売り続けるためには欠かせない、重要な仕事の一つです。部品を変更するためにはまず、その部品が使われている回路への理解が必要です。該当回路について調べていくうちに「この回路はどうしてこの部品を使用しているのだろうか?」という疑問が生まれ、その部品の詳細をデータシートなどで調べ、回路に組み込む際に必要とされる部品のスペックや設計者の意図を探ります。場合によっては、社内にある検証用のテスタを動作させて、オシロスコープなどの計測器を用いて該当箇所の動作を確認することもあります。また、新しい部品に変更することで他の回路や部品に影響が出ることがないように、細心の注意を払って検討・検証を行う必要があります。
このように、過去に設計された回路の勉強をしながら作業を進めることが多々あります。時には回路をより良くするための気付きなども見つかるため、自分のスキルアップと共に今後の設計に生かす改善提案につながることもあります。
次に実感しているのは、事前準備とコミュニケーションの重要性です。海外のお客様を相手にする場合は特にコミュニケーションが重要です。
台湾のお客様の元で2週間ほどテスタの納品と据え付け作業を行った時のことです。初めての海外出張でしたので、なるべく現地でトラブルが発生しないように、出張前に入念に準備することに力を入れました。具体的には、営業担当者と顧客要求仕様やスケジュールを綿密に確認したこと、また、事前にお客様を招き立ち合いとデモを実施し、その時に発生したトラブルや改善事項は全て据付前に解消するように努めたことです。準備内容としては基本的なことですが、このような当たり前の準備が後に現地でのトラブルを事前に防ぐことに繋がりました。
現地作業時には当然ですがお客様と英語でコミュニケーションを取る必要がありました。英語力があまりなくてもお客様とやり取りをするだけならば、時間をかけてじっくり話し合えばなんとかなりますが、製品に関する仕様やデバイスに発生している特殊な現象などについての説明にはとても苦労しました。お客様の中には半導体に関する知識があまりない方が居たため、相手に分かるようにかみ砕いて説明する必要があったからです。その時には図や絵、翻訳サイトなどを用いながらお客様に説明することで、理解していただくことができました。
綿密な事前準備とコミュニケーションの努力によって滞りなく据え付け作業が完了し、その成果もあってか、同企業からリピートの受注をいただき、自分がやってきた対応に間違いはなかったのだ、という自信につながりました。
学生の皆様へ
昨今、半導体業界はニュースなどでも取り上げられている通り、半導体そのものの需要増加に加え、化合物半導体を材料としたSiC MOSFET やGaN FET と呼ばれている新しいパワーデバイスの開発技術が注目されているなど、ここ数年でとても大きな盛り上がりを見せており、今後も数多の企業の参入が見込まれ、世界中から期待されています。
このように時代の最先端を舞台とする、活気にあふれる半導体業界は、大きく分けて4種の企業群(ウェーハメーカー、半導体デバイスメーカー、半導体検査装置を含む半導体製造装置メーカー、半導体部品を販売する商社)で構成されています。これらの内、半導体製造装置並びに関連事業を扱う日本の企業群によってSEAJ(日本半導体製造装置協会)は成り立っています。その一角を担う半導体検査装置を主な事業とするテセックの魅力は、日本は元より世界中のデバイス開発メーカーやデバイス製造メーカーを相手にした多種多様なデバイスの検査を通じて、グローバルな視点でデバイスの最新技術や開発情報に触れられることにあると思います。
本稿を通じて、半導体検査装置やそれを取り巻く環境に魅力を感じ、テセックを含む半導体検査装置メーカーに興味を持っていただき、皆さんが就職活動をする際の選択肢の一つになりましたら幸いです。ご健闘を祈ります。