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日本電子株式会社

EM 事業ユニット EM システム設計部 前川 大智

背景

初めまして、日本電子株式会社に入社して5年目となる前川 大智と申します。今回このような場をいただくことができ、私の仕事の内容や、学生時代とのギャップなど感じたことをお伝えできればと思います。

まず、私がどのような人なのか簡単にですが紹介させていただきます。私は大学、大学院と応用生命システム工学を専攻し、生命・情報・電気という広い分野の勉強をしてきました。学業以外では、幼いころより続けているチェロの演奏に力をいれました。学内のオーケストラサークルで活動をする他にも、県内外の市民団体への参加など精力的に活動をしていました。

そんな私は2015年4月に日本電子株式会社へ入社となりました。

この業界に入ったきっかけ・動機

大学生の時、分析機器の分厚いマニュアル書を見たとき、「分析したいものを入れたら自分が得たい結果を出せたらいいのに」という印象を持っていました。そのため、自動でできる機能を増やすことによって、ユーザーの負担を減らし、最先端の研究を支える仕事をしたいと思ったのが入社したきっかけです。

仕事内容、働き方、日常の出来事

私は現在、透過電子顕微鏡(TEM)のシステム設計部に所属しています。

「システム設計」という部署では、TEMを制御するためのソフトウェアの仕様検討・実装・テストを行い、製品となるものを作っています。システム設計の仕事は多岐にわたり、TEMを使用する人が触れるユーザーインターフェース(UI)の設計や、TEMを制御するファームウェアの設計などがあります。

半導体デバイスの製造工程において、TEMが用いられるのは主に検査工程です。製造中のデバイスや、開発中のデバイスに不具合が発見された場合、そのデバイスは不良品となるため、この検査は重要であると言えます。

今私が携わっている仕事は、この検査工程を自動で行うソフトウェアの設計です。設計の仕事は大きく分けると3つに分類できます。

  • 1つ目は、TEM やその他分析器との通信の設計です。自動ソフトウェアは、TEM 以外にも自社、他社の分析器を動かして実現させるため、速度、安全性を考慮した設計を心がけています。
  • 2つ目は、自動処理のフローの設計です。自動で何をしたいのか?という目的をはっきりさせ、期待する結果を得ることができるような設計を心がけています。
  • 3つ目は、ユーザビリティを考えたUI の設計・実装です。「利用者」に向けてソフトウェアを作っているので、ターゲットとする「利用者」を意識した設計を心がけています。
    自動ソフトウェアを作る上で、お客様からの要望が非常に重要です。完成までに期間を区切り、現状までの自動機能を見ていただくことで、お客様と作るものの間に差異が無いかを確認します。確認をする度に求めるものが変わることもありますが、逐次その要望を実現させるための方法を検討し、形とする作業をしています。
透過電子顕微鏡(TEM)

私の働く部署では、フレックス制の勤怠形式があります。1ヵ月内で調整が取れていれば、前日遠出していて疲れているときでも、翌日の出社時間を自分で調整できるため、働きやすい環境だと思います。

システム設計部としてのタイムスケジュールの1例を以下に示します。

9:00 出社
(メールの確認とスケジュール確認)
10:00 途中休憩
10:10 設計・打ち合わせ
12:00 昼食
(同期と食事)
13:00 昼礼
(部内のスケジュールの確認)
13:10 設計作業・実機テスト
15:00 途中休憩
15:10 設計作業・実機テスト
17:00 掃除
(週1回)
17:10 設計作業・実機テスト
19:20 退社

休日は主に、チェロの演奏をして過ごしています。私のように平日仕事をして、休日に楽器を弾くという社会人は多く、そのような人たちが所属するアマチュアオーケストラ団体は複数あります。
団体によって、演奏する曲や所属する人の年齢は非常に様々です。もともと私は、クラシック音楽をずっとやっていましたが、最近は映画音楽や、ゲーム音楽などこれまで演奏する機会のなかった曲に挑戦をしています。

チェロの演奏

仕事のやりがい・厳しいこと

この仕事を通してやりがいを感じたのは、入社して初めての仕事を形にできたときでした。

私が入社して最初の仕事は、「外部に公開しているTEMの機能をPython(プログラミング言語)から動かすことができるソフトウェアを作る」でした。もともと、TEMを外部から動かすことができるソフトウェアは存在していました。ユーザーは、そのソフトウェアを利用することで、TEMを制御できるソフトウェアを作ることができます。しかし、これまで公開されていたソフトウェアは、C++とVB6というプログラミングの難易度が高く、手軽に機能を組み合わせてソフトウェアを作ることができませんでした。
そこで、昨今注目度の高い機械学習するためのライブラリを豊富に持ち、比較的プログラミングのライトユーザーでも扱いやすいPythonに対応する必要がありました。

私は入社するまで、TEMを扱ったことが無く、プログラミングもほとんどしたことが無かったため、仕事の初動にはとても時間がかかりました。幸いにも、今回設計するソフトウェアは参考にできる既存のソフトウェアがあり、Python言語については外部講習やセミナー等に参加する機会をいただき、勉強をする時間をいただきました。

勉強期間を経て、仕事にとりかかったところ、作業を始めた当初は予想に反して、仕事の進捗は順調でした。今思えば、作ろうと思うソフトウェアの全体像を初めに把握せず作業したことで、すぐに作業ができる簡単な作業だけをやっていたからだと思います。そのため、日が経つにつれ、仕事の進みは遅くなり結果として作業開始から1ヵ月経ってもTEMを動かせるようにはなっていませんでした。また、作っているものが大きくなるにつれ、不具合も多くなり、焦って作業をしてまた不具合が起きるという悪循環に陥っていました。先輩社員に様々なアドバイスをもらい、どうしてもわからないところを考えてもらい、何とかソフトウェアを作ることができました。

この仕事を通して、システム設計という仕事の良さは、TEMでもプログラムでも分からなかったことを勉強し経験することによって、作ろうと思うものを創造することが出来、それを形にすることができること。また、その過程で生じた不具合を考え、工夫し解決できることだと思いました。

この業界に入ってよかったこと・学生へのアピール・抱負・その他

半導体は、スマートフォンや家電製品などの電子機器はもちろんのこと、電車の制御やインフラ整備にも使われています。つまり、現代人にとって、とても大切な物質です。
また、昨今ではIoTの需要も増えており、成長著しい業界です。しかし、日常のほぼ全てにある半導体について、この業界に関わるまでは知らないという人が大多数だと思います。TEMという分析機器の面から、この業界に関わることとなりましたが、対象となる半導体の小ささ、構造の複雑さには仕事を始めた当初とても驚きました。TEMで見た数um~数nmというとても小さい半導体が手元のスマートフォンに大量に内蔵され動いていると考えたとき、1つ1つの半導体の品質の重要性を感じました。このように、日常で目に見えて関わる業界ではありませんが、実はすべてにおいて密接にかかわる。そういった仕事ができるのが、この業界の良さだと思います。

半導体業界は技術革新のスピードが早く、より小さく、より複雑さが求められる中で、分析機器業界においても、飛躍的発展が求められています。この環境の中で、技術者であれば、技術系の素養や資格だけでなく、日々変わる環境に対応していける柔軟性と、広い視野を持った思考力が求められるのかと思います。

最後に、昨今、自動化を求める声は半導体業界に関わらず多くの業界で求められている印象を受けます。自動化を実現させるために、広い視野を持ち、それを実現することができるだけの設計の経験を積み、活かしていきたいと思っています。

EM 事業ユニット EM システム設計部 前川 大智
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