TSCAに関するFAQ

TSCAに関するFAQ

[2025/02/17] SEAJ環境情報専門委員会

  • * 本FAQは、環境法規制解釈の参考情報としてご活用いただくことを目的としてSEAJ環境情報専門委員会が作成したものです。
    執筆者の知見に基づく独自の見解を含んでおり、法的厳密性を保証するものではありません。法令の内容解釈に関しましては、必ず原文をご参照の上、各社様の判断でご対応下さい。

TSCAの正式名称は何ですか?また、目的は何ですか?

  • TSCAの正式名称は「Toxic Substances Control Act」であり、1977年1月1日に発効した法律です。米国内で製造、輸入、処理、流通する化学物質の安全性を評価し、人間の健康や環境に対する不合理なリスクを防止することが目的です。2016年に大幅に改正され、EPA(米国環境保護庁)の権限の強化、EPAによる既存化学物質のリスク評価に関する規定が定められたほか、EPAが評価しリスクが大きいと判断した場合は、規制対象が成形品にも広げられることとなりました。

TSCAの対象者は?

  • 米国内の製造業者および輸入業者。日本国内のメーカーにおいては、米国現地法人または輸出先企業が届出対象者となります。

TSCAの対象/対象外となる物は何ですか?

  • TSCAの対象は、商業用として米国で製造、加工、または輸入される「化学物質、混合物または化学物質、混合物を含有する物品(成形品を含む)です。
    TSCAの対象外は殺虫剤、食品、食品添加物、医薬品、化粧品、放射性物質、軍需物資、タバコなどです。
    半導体製造装置は成形品としてTSCAの対象となります。

TSCAインベントリとは?

  • TSCAインベントリとは、1975年1月1日以降に製造、輸入または加工された化学物質リストで、約半年ごとにEPA(環境保護庁)により更新されます。インベントリには機密区分と公開区分があり、機密区分に掲載されている物質であれば、名称等は届出者以外に公開されません。
    インベントリに収載されている化学物質を既存化学物質と呼び、公開区分に分類されている物質には「CAS登録番号」が記載されています。
    一方、インベントリに収載されていない化学物質を新規化学物質と呼び、この化学物質を製造・輸入する米国内の輸入者は、90日前に製造前届出(Pre-Manufacturing Notice:PMN)をEPAに提出しなければいけません。ただし、一部の要件を満たせばPMN提出を免除できる「PMN免除規則」もあります。

TSCAのPBT物質とは何ですか?

  • PBT(Persistent, Bioaccumulative, Toxic)物質は、難分解性、高蓄積性、毒性を有する物質です。
    2016年のTSCA改正で優先評価物質に対する措置の導入および企業の義務が明確化され、第6条(h)項が追加されました。

    第6条:化学物質及び混合物の優先度、リスク評価並びに規制  (h)項 : 難分解性、生体蓄積性及び毒性を有する化学品

    2021年1月に米国環境保護庁(EPA)はTSCA第6条(h)の追加に基づき、5種類のPBT物質を含有する製品及び成型品の鋳造、加工及び商業的流通を禁止/制限することになりました。5種類のPBT物質は下のとおりです。

    • DecaBDE:デカブロモジフェニルエーテル
    • HCBD:ヘキサクロロブタジエン
    • PCTP:ペンタクロロチオフェノール
    • PIP (3:1) :リン酸トリス(4-イソプロピルフェニル)
    • 2,4,6-TTBP :2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール

PBT物質は主に何に使われている物質ですか?

表 TSCA第6条(h)に基づくPBT 5物質
略称 物質名 用途
DecaBDE デカブロモジフェニルエーテル 電化製品、繊維製品、
ポリスチレン・ABS樹脂・ポリエステル等の難燃剤
HCBD ヘキサクロロブタジエン 廃燃料の燃焼時に用いられるハロゲン化脂肪族炭化水素
PCTP ペンタクロロチオフェノール ゴム部品の剛性率向上のための添加剤
PIP (3:1) リン酸トリス
(4-イソプロピルフェニル)
潤滑材やグリース、工業用コーティング剤、接着剤、
プラスチック製品の可塑剤や難燃剤、
耐摩耗性添加剤、または抗圧縮性添加剤
2,4,6-TTBP 2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール 燃料等の添加剤や、
自動車や機械のメンテナンス用オイルや潤滑剤

No action assurance(無処置保証)とは?

  • PBT物質のうちPIP(3:1)に関しては、2021年3月8日までに代替品に置き換えることは非現実的であると産業界(米国半導体工業会含む)からのコメントに従い、EPAは準拠日当日に180日間のノーアクション保証(No Action Assurance :NAA)を告知しました。
    これによりPIP(3:1)使用成形品の義務への準拠が180日間停止され、NAA終了前にさらに準拠日は延長され、最終的に2024年10月31日まで延期されました。ただし、「水流への排水禁止」と「サプライチェーン下流への通知」についてはNAAに含まれないため、順守が必要です。

PFASに関する重要新規利用規則(SNUR)とは?

  • 重要新規利用規則(SNUR)とは?

    SNURは、Significant New Use Ruleの頭文字で、物質が新たな用途で使用される場合、製造、輸入、または加工しようとする者に対し、当局に90日前までに重要新規利用届出(SNUN)を提出することが義務付けられています。化学物質の使用が環境や人間の健康に対して潜在的なリスクをもたらす可能性がある場合に適用されます。基本的に成形品はSNUR適用除外とされていましたが、現在は成形品も対象となる物質があるので注意が必要です。
    EPAは、2011年1月1日以降から2022年12月31日の間のいずれかの年にPFAS定義に当てはまる化学物質・それらを含む混合物や成型品を製造(含む輸入)した者に対して、データ報告義務および記録保管を義務付ける規則を2023年10月11日付で公示しました。

    第8条(a)(7) PFAS情報の報告と保管について(PFAS Reporting Rule)

    対象物質:

    報告が必要な物質は第2章で定義されており、次の3つの部分構造の少なくとも 1つを構造的に含む化学物質または化学物質を含む混合物とされています。

    1. (1) R-(CF 2 )-CF(R')R'' (CF 2 部分とCF部分は両方とも飽和炭素)
    2. (2) R-CF2 OCF2-R' (RおよびR'は、F、O、または飽和炭素のいずれか)
    3. (3) CF 3 C(CF 3 )R'R''(R'およびR''は、Fまたは飽和炭素のいずれか)

    報告内容:

    1. A. 各化学物質または混合物の対象となる一般名または商品名、化学的正体および分子構造
    2. B. 各物質または混合物の用途カテゴリーまたは提案されたカテゴリー
    3. C. 製造または加工された各物質または混合物の総量、用途カテゴリーごとに製造または加工された量、およびそれぞれの提案量の合理的な推定量
    4. D. 各物質または混合物の製造、加工、使用、または廃棄から生じる副産物の説明
    5. E. 各物質または混合物の環境および健康への影響に関する既存のすべての情報
    6. F. 職場における各物質または混合物にばく露された個人の数、およびばく露されるであろう個人の数の合理的な推定値およびばく露期間
    7. G. 各物質または混合物の廃棄の方法、および廃棄方法の変更

    報告期間:

    一般の報告対象者及び研究開発用用途の対象者は、2025年7月11日から終了日:2026年1月11日までの 6か月間に報告する必要があります。
    成形品の輸入者及び小規模製造業者は、2025年7月11日から2026年7月11日までの12 か月間に報告する必要があります。

    記録保管:

    報告要件の対象となる各者は、EPA に報告したあらゆる情報を文書化した記録で保管する必要があります。
    関連する記録は、提出期間の最終日から5 年間保管となっているため、提出期間の最終日の2026年7月11日から5年間となります。

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